あれは忘れもしない中学1年の春。
当然、最初は自己紹介。私は普通に名前と出身小学校を言って終わろうと考えてた。
しかし、担任が何を思ったのか「それぞれ自分が尊敬する人物を言いなさい」と。
現在でも尊敬する人物なんていないのに、つい何日か前まで小学生だった私にいるわけない。
大体尊敬する人物なんて考えたこともあるはずもない。毎日ファミコンで遊んでるアホ小学生だったし。
無難に終わらせようと心を落ち着かせ順番がくるまで何を言うか耳を傾けていた。
やはりついこの前まで小学生。そんな大それた名前などでてくるはずもない。小学校の社会科で習ったような名前を言ってる奴とかもいたけど、「なんで?」と下手に突っ込まれる危険もあるのでそいうのは避けなければいけない。実際、「なんで?」と担任に聞かれしどろもどろになってる奴もいた。
そんな中、男女を問わず「父」か「両親」という答えが多かった。私は思った。
「これは無難だ」「実に無難だ」
コレで行こうと心に決めたところで私の順番がきた。名前と出身小学校を言う。
「よしここまでは順調だ」
一呼吸置いた私はこう言った。
「尊敬する人は父です」
きっぱりと言った。
「よし無難に終わった」
と思った私の耳に入ってきたのは同級生達の笑い声。
「何故だ?無難に終わったはずなのに」
帰り道小学校が同じ奴に聞いてみた。私の自己紹介のどこが可笑しかったのかと。
そしたらそいつはこう言った。
「尊敬する人物で父と言ってたけど乳に聞こえた」と。
それ以来自己紹介がますます嫌いになった。